TOPファーストレディー

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ファーストレディー (First Lady) とは、一般に国家首脳(大統領や首相)の夫人を指す語である。ファーストは「トップの」、レディーは「高貴な夫人や女性」を意味する。
そもそもはアメリカ合衆国大統領の夫人を指す用語だったが、第一次世界大戦後ごろから世界中に広まり、今日では多くの国で大統領や首相の夫人を指す語として使われている。
なおカタカナ表記では短母音で「レディ」とするものが定着しているが、日本語の実際の発音は長母音の「レディー」である。『大辞林』でも見出し語を「ファーストレディー」と記している。


概要


→ 日本のファーストレディについては「内閣総理大臣夫人」を参照。
ファーストレディーは、私的には夫である大統領首相の日常の暮らしを支えるかたわら、公的には首脳の非政治的行事 (文化事業の視察、運動競技の参観、来賓の歓迎行事や晩餐会など) に参加したり、首脳の外国訪問に同伴したりする。首脳が外国訪問に妻を伴うのは、かつて王侯が遠方へ出かける際には必ず妃を伴った習慣の名残である
首脳が未婚だったり離婚している場合、また妻が病弱だったりすでに死去している場合には、娘・姉・妹・嫁などといった首脳の近親の女性がファーストレディーとなる。アメリカでは大統領が在任中に妻と死別したため近親の女性が代役を務めたり、またそののち大統領が再婚したりといった例がいくつかあり、このため現大統領のバラック・オバマが43人目の大統領なのに対して現ファーストレディーのミシェル・オバマは52人目のそれとなっている。
日本では田中角榮総理の妻・はなが病弱だったため、長女の眞紀子が常任の “ファーストレディー代理” を務めた例がある。一方で、何事につけても旧来の慣例にこだわらなかった小泉純一郎総理は、独身 (離婚) にもかかわらず5年間の在任中1度もファーストレディーの代理を置かなかった
なお、警備に関しては、ファーストレディーには専属の護衛官が付くのが一般的である。また、アメリカなど外国では、ファーストレディー専属のスタッフが付くことがあるほか、ファーストレディー専用のオフィスを備えた官邸もある 。例えば、アメリカ大統領のファーストレディーは、首席補佐官を筆頭に専属のスタッフが任命され、公務や政治活動を補佐する。またホワイトハウスのイーストウイングに専用のオフィスが設けられている。(ただし、ホワイトハウスの心臓部と言えるのはウエストウイングである。なお、ヒラリー・クリントンはファーストレディー時代、例外的にウェストウイングにオフィスを構えていた。)

語源と歴史


新国家アメリカ合衆国の元首にして行政府の長である「民によって選出された王」の呼称は、合衆国憲法によって「アメリカ合衆国大統領 (President of the United States)」と定められていたが、初代大統領のジョージ・ワシントン以来、大統領の伴侶である大統領夫人の呼称は長らく存在しなかった。そのためワシントン夫人のマーサは「レディー・ワシントン (Lady Washington)」、次のジョン・アダムズ大統領夫人のアビゲイルは「ミセス・プレジデント (Mrs. President)」または「ハー・マジェスティー (Her Majesty = 陛下)」と呼ばれ、初期の大統領夫人の中には「プレジデントレス (Presidentress)」などという造語で呼ばれる者も多かったなど、用語に著しく一貫性が欠けていた。
「ファースト・レディー (first lady)」という表現の初見は1849年で、第3代トーマス・ジェファソン大統領と第4代ジェームズ・マディソン大統領の2代16年にわたってホワイトハウスのホステス役を務めた (下記「逸話」の節を参照) が死去した際、その葬儀の席上時のザカリー・テイラー大統領が読み上げた弔辞の中に

She will never be forgotten, because she was truly our first lady for a half-century.


彼女のことは永遠に忘れ去られないことでしょう。なぜなら半世紀の長きにわたって、彼女はまさに我々にとって第一級の女性であったからであります。

とあったのがそれである。
また1863年には、イギリスのタイムズ紙記者が、南北戦争の戦争特派員として滞米していた時に見聞したことを綴った手記を出版しているが、その中にエイブラハム・リンカーン大統領夫人のメアリーに関して流布していた風説を紹介したくだりがあり、そこでマーサのことを

...concerning the first lady in the land


この地における第一の女性に関する...

と言い表している。これが first lady という語が現大統領夫人に使われた初例である。
「ファーストレディー (First Lady)」という語が大統領夫人の呼称として定着するは実に20世紀初頭になってからのことだった。1911年に劇作家チャールズ・フレデリック・ナードリンジャーは、ドリー・マディソンを題材とした喜劇『ザ・ファースト・レディー・イン・ザ・ランド (The First Lady in the Land)』を書いたが、これが大ヒットとなり新聞の劇評などで取り上げられたため、以後広く一般にも知れわたるようになった。
第一次世界大戦後、首都ワシントンで外国首脳夫妻を招いての公式行事が行われることが多くなると、ホワイトハウスでは大統領夫人との釣り合い上、外国首脳夫人に対してもファーストレディーの呼称を用いるようになり、ここからこの語が世界に広まっていった。今日では新聞紙面やニュースの中で使われる用語のみならず、大統領府や首相府が公式・非公式の席上でこれを使用している国も少なくない

なお「ファーストレディー」という英語の表現は、英語圏以外の国でも翻訳せずにそのまま「First Lady」というかたちで使われることが多く、国際語的な一面をもった表現ともなっている。


用例




逸話


最初のファーストレディー


アメリカ第3代大統領のトーマス・ジェファソンは、1801年の就任時には妻と死別していたため、娘のマーサをファーストレディーとしていた。しかしマーサにも家庭があり、また外交儀礼や社交術が物を言う時代、主婦とファーストレディーの掛け持ちには体力的にも厳しいものがあった。そこでジェファソンは国務長官ジェームズ・マディソンの妻で親しい友人でもあったドリーをもう一人のファーストレディーとしてホワイトハウスに常駐させた。ジェファソンが二期八年で引退を表明すると、その後継に出馬して当選したのがこのマディソンで、彼も大統領を二期八年務めている。
したがってドリー・マディソンは、「親族ではないファーストレディー」(唯一のケース)であり、1人の大統領に対して同時に存在した「2人目のファーストレディー」(唯一のケース) であり、2人の大統領を支えた「2代にわたってのファーストレディー」であり(唯一のケース)、16年間もホワイトハウスを生活の基盤とした「最も長いファーストレディー」(最長不倒記録) となった。
そしてこのドリー・マディソンが「ファーストレディー」という呼称の語源と歴史にも大きな役割も果たしていることは前述の通りである。

最強のファーストレディー


20世紀になって世界各地に独裁的長期政権が誕生すると、強烈な個性と政治力を持ったファーストレディーが登場して時に紙面を賑わせた。そうした中には、その人気から政権に多大な安定をもたらした者(エヴァ・ペロン)や、逆に不人気から国を傾けてしまった者 (イメルダ・マルコス)、夫から副大統領指名されその死後自ら大統領に昇格した者(イサベル・ペロン)や、逮捕されて死刑判決を受けた者 (江青) まで、さまざまなファーストレディーがいた。
では「世界最強の男」といわれるアメリカ大統領の夫人はどうなのかというと、その一貫して控えめな姿勢は意外なほどで、政治に容喙するようなファーストレディーはこれまでほとんど存在しなかった。
唯一の例外がウッドロウ・ウィルソン大統領夫人のイーディスである。第一次世界大戦の戦後処理や国際連盟の設立などに奔走していたウィルソン大統領は、1919年9月25日に過労で倒れ、さらに10月2日には脳梗塞を発症した。この結果、ウィルソン大統領には左半身不随や左側視野欠損、言語障害などの障害が残ってしまい、実質的な執務不能状態に陥った。しかし大統領府は大統領の執務不能という事態を秘匿し、副大統領や議会関係者を一切ホワイトハウスに近づけさせず、以後長期にわたってイーディスがすべての国政を決裁した。こうした事実が明らかになったのは実にウィルソンの死後になってからのことで、これが後の大統領権限継承順位を明文化した憲法修正第25条制定への伏線となった。
ホワイトハウスを去った後に公職に就いたファーストレディーもこれまでに2例しかない。1946年から1952年までアメリカの国連代表を務めたエレノア・ルーズベルトと、2001年1月から2009年1月まで上院議員を務め、その後オバマ政権国務長官に就任したヒラリー・クリントンである。このふたりは共に「最強のファーストレディー」と呼ばれたが、夫のフランクリン・ルーズベルト大統領の死去後隠棲しようとしていた矢先に請われて国連代表に就任したエレノアと、夫のビル・クリントン大統領が当初から「ひとつ分のお値段でふたつ分のお買い得」と評し、全幅の信頼を置くアドバイザーとして閣議にも臨席させたヒラリーとはその内容が大きく異なる。
2008年の大統領選にも出馬して歴史的激戦を戦い抜いたヒラリーは、アメリカのファーストレディーとしては出色の存在であることは間違いない。


注釈




参考史料




関連項目




外部リンク


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